今話題の商社が含まれているのが、この卸売業セクターです。
卸売セクターには、特定の分野に特化した専門商社と、幅広い分野を扱う総合商社があります。
専門商社と総合商社の主な違い
特徴 | 専門商社 | 総合商社 |
---|---|---|
取扱商品 | 特定分野に特化(例:食品、鉄鋼、医薬品) | 多岐にわたる(エネルギー、鉱物資源、食品、テクノロジーなど) |
事業規模 | 比較的小規模 | 大規模 |
グローバル展開 | 限定的な場合が多い | 世界中に拠点を持つ |
リスク分散 | 特定分野の影響を受けやすい | 多様な事業でリスクを分散 |
卸売業における為替変動の影響
円高の影響
- 輸入コストの低減:海外からの仕入れコストが下がり、利益率の向上につながる可能性があります。
- 国内競争力の向上:輸入品の価格低下により、国内市場での競争力が高まる可能性があります。
- 海外投資の機会:円高により海外資産の取得コストが下がり、海外展開や投資の好機となる可能性があります。
円安の影響
- 輸出競争力の向上:日本企業の製品やサービスの価格競争力が高まり、輸出が促進される可能性があります。
- 海外収益の円換算増:海外子会社の利益や配当が円換算で増加し、企業業績にプラスの影響を与える可能性があります。
- 仕入れコストの上昇:輸入品や原材料のコストが上昇し、利益率の低下につながる可能性があります。
最近の業界の傾向
最近の総合商社は、傾向として円高に対してより弱い立場にあります。
総合商社は海外事業からの収益が大きな割合を占めています。円高になると、これらの海外収益が円換算で目減りするため、業績に悪影響を及ぼします。
2023年度のデータは具体的な数字は提供されていませんが、2021年度のデータでは、
- 三菱商事:約70%
- 三井物産:約60%
- 伊藤忠商事:約60%
- 住友商事:約70%
- 丸紅:約60%
となっていて、円安の影響により海外収益が円換算で増加していることから、2023年度の海外売上高比率は2021年度と同等かそれ以上である可能性が高いです。
日本を代表する卸売企業9社
三菱商事
- 概要: 資源、エネルギー、金属、機械、化学品、生活産業など、幅広い分野で事業を展開する総合商社です。
- 特徴: グローバルなネットワークと多様な事業ポートフォリオが強みです。
- https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/
三井物産
- 概要: エネルギー、金属、機械・インフラ、化学品、生活産業など、多岐にわたる分野で事業を展開する総合商社です。
- 特徴: 資源分野に強く、グローバルな事業展開が特徴です。
- https://www.mitsui.com/jp/ja/
伊藤忠商事
- 概要: 繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融など、幅広い分野で事業を展開する総合商社です。
- 特徴: 生活消費関連分野に強く、国内外で安定した収益を上げています。
- https://www.itochu.co.jp/ja/
住友商事
- 概要: 金属、輸送機・建機、インフラ、メディア・デジタル、生活・不動産、資源・化学品など、幅広い分野で事業を展開する総合商社です。
- 特徴: バランスの取れた事業ポートフォリオと堅実な経営が特徴です。
- https://www.sumitomocorp.com/ja/jp
丸紅
- 概要: 食料、生活産業、素材、エネルギー、金属、機械・インフラ、金融・リース・不動産など、幅広い分野で事業を展開する総合商社です。
- 特徴: 穀物や電力事業に強みを持ち、グローバルな事業展開をしています。
- https://www.marubeni.com/jp/
豊田通商
- 概要: トヨタグループの中核商社として、自動車関連事業を中心に、金属、エネルギー、化学品、食料など幅広い分野で事業を展開しています。
- 特徴: トヨタグループとの連携が強みです。
- https://www.toyota-tsusho.com/
双日
- 概要: 自動車、航空宇宙、インフラ、金属資源、化学品、食料、リテールなど、幅広い分野で事業を展開する総合商社です。
- 特徴: 航空機リース事業などで独自の強みを持っています。
- https://www.sojitz.com/jp/
長瀬産業
- 概要: 化学品、合成樹脂、電子材料、機能材料、生活関連など、幅広い分野で事業を展開する化学系専門商社です。
- 特徴: 化学品分野で高い専門性を持ち、国内外で事業を展開しています。
- https://www.nagase.co.jp/
阪和興業
- 概要: 鉄鋼、金属、燃料・化成品、食品、木材、機械などを扱う専門商社です。
- 特徴: 鉄鋼分野に強みを持ち、国内外で幅広い事業を展開しています。
- https://www.hanwa.co.jp/
卸売業セクターの5年間のチャート推移
日本取引所グループの業種別 卸売業セクターの5年チャートを見てみましょう。

2020年にはコロナショックにより、他のセクターと同じように株価は急落しました。
2020年後半から2021年にかけて、株価は徐々に回復し、上昇傾向に転じます。これは、各国政府や中央銀行が大規模な経済対策を実施し、景気が徐々に回復に向かったことによるものです。また、ワクチン接種の開始や経済活動の再開も、株価上昇を後押ししました。
2022年には、ロシアのウクライナ侵攻や世界的なインフレの高まりなど、地政学リスクやインフレ懸念が台頭しました。これにより、世界経済の先行き不透明感が増し、株価は一時的に調整局面入りしました。
2023年に入ると、インフレのピークアウトや金融引き締めペースの鈍化などから、再び株価は上昇基調を取り戻します。また、中国経済の回復や資源価格の上昇も、卸売業セクターの業績を押し上げました。
あと2023年前半頃にウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが日本の総合商社株を買い増したというニュースは流れました。このニュースは、卸売業セクターの株価に大きな影響を与えたと考えられます。
2024年の8月に日銀が利上げを行うことが決定されると、いきすぎた円安の是正や、買われすぎた反動で、株価は大きく崩れました。
そこから2025年まで、為替は落ち着きを見せていますが、トランプ政権の関税政策や日銀の利上げ姿勢で、将来の見通しが立てづらいところもあり株価は軟調に推移しています。
まとめ
売業は製造業や小売業と密接に連携しているため、景気の波に影響を受けやすいセクターです。特に、原材料価格の高騰や需要の変動が業績に直結する可能性があります。2025年はグローバル経済の不確実性(例えば、米国のトランプ政権の政策や円安・円高の動向)が予想されるため、注意が必要です。
卸売業は利益率が低い傾向があるため、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)だけでなく、ROE(自己資本利益率)やキャッシュフロー、負債比率を確認することが重要です。
前日終値時点の配当利回りと、ROEは
- 三菱商事: 4.04% ROE: 11.30%
- 三井物産 : 3.69% ROE: 15.30%
- 伊藤忠商事 : 2.94% ROE: 15.60%
- 住友商事 : 3.85% ROE: 9.40%
- 丸紅 : 3.93% ROE: 15.20%
- 双日 : 4.57% ROE: 11.40%
となっています。
一般的に、総合商社のような大規模な事業を展開する企業では、ROEが10%を超えると優秀と評価されると言われているので、日本の大手商社は優秀だと言えます。
利回りも高い状態が続いていて、少額からなら配当目的では購入しても良さそうなところですが、懸念点はトランプ政権での関税政策と、日銀の利上げ姿勢による為替変動の読めなさになっています。
IRBANKで財務状況を個別にチェックして、ある程度利益が目減りしたとしても、すぐには財務が揺るがないと判断できた銘柄を選べたらいいと思います。
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