銀行業とは、メガバンク(例:三菱UFJ、三井住友、みずほ)、地方銀行、信託銀行、インターネット銀行などを行っている企業のことを指します。
日本は長い低金利状態から、金利上昇の局面に入っており、注目のセクターです。
銀行業における為替変動の影響
円安の影響
- 収益増加: 円安は海外事業からの収益を押し上げます。2024年3月期の3メガバンクの合計当期利益は3.1兆円と過去最高を記録し、この好調な業績の大きな要因が円安による海外事業の収益増加でした。
- 為替感応度の上昇: メガバンクの為替感応度は過去10年で2-4倍に拡大しており、10円の円安につき各行350億円-800億円の増益効果があるとされています。
- リスクアセットの膨張: 円安により海外資産に関連するリスクアセットが膨張します。例えば、10円の円安で大手行合計では約5.6兆円のリスクアセット増加が見込まれます。
- 海外M&A費用の上昇: 円安により海外企業の買収コストが高騰し、銀行の成長戦略に影響を与える可能性があります。
円高の影響
- 収益減少: 円高は海外事業からの円換算収益を減少させ、銀行の業績に悪影響を与えます。
- 株価への影響: 円高は銀行株の下落要因となる傾向があります。これは、円高によりマイナス金利政策の深掘りが行われるのではないかという市場の懸念によるものです。
- 金融政策への影響: 急激な円高は日本銀行の金融政策に影響を与え、銀行セクターの収益性に間接的な影響を及ぼす可能性があります。
最近の業界の傾向
三菱UFJフィナンシャル・グループの2023年度の決算資料によると、海外事業の収益貢献度は約40%に達しており、日本の銀行業セクター、特に大手銀行は昔(1990年代以前)と比べて為替に影響されるようになっていると言えます。
一方で、国内中小銀行は依然として地域密着型が多く、為替の影響はメガバンクほど顕著ではありません。つまり、「銀行業セクター全体」と一口に言っても、規模や戦略によって影響度は異なります。
日本を代表する銀行10行
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)
- 概要: 日本最大の金融機関であり、世界的な金融グループです。リテール、法人金融、投資銀行業務など、幅広い金融サービスを提供しています。
- 特徴: グローバルなネットワークを持ち、海外展開に強みを持っています。多様な金融商品・サービスを提供し、総合的な金融ソリューションを提供しています。
- https://www.bk.mufg.jp/kigyou/index.html
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)
- 概要: 日本を代表する大手金融グループです。バランスの取れた事業展開で、安定した収益基盤を持っています。
- 特徴: 質の高いサービスと顧客基盤に強みを持っています。デジタル技術の活用を積極的に推進し、先進的な金融サービスを提供しています。
- https://www.smfg.co.jp/
みずほフィナンシャルグループ
- 概要: 日本有数の大手金融グループです。大企業向け融資や投資銀行業務に強みを持っています。
- 特徴: 法人顧客との取引が多く、大規模プロジェクトへの融資実績が豊富です。デジタル変革を加速させ、新たな金融サービスの開発に注力しています。
- https://www.mizuho-fg.co.jp/index.html
ゆうちょ銀行
- 概要: 日本最大の預金残高を誇る銀行です。全国の郵便局ネットワークを基盤に、個人向け金融サービスを提供しています。
- 特徴: 安定した預金基盤と、全国に広がるネットワークが強みです。地域社会との連携を重視し、地域活性化に貢献しています。
- https://www.jp-bank.japanpost.jp/aboutus/abt_index.html
三井住友トラスト・ホールディングス
- 概要: 信託業務に強みを持つ金融グループです。不動産、証券、年金などの信託業務で高い専門性を持っています。
- 特徴: 富裕層や法人顧客に対する資産管理・運用サービスに強みを持っています。信託と銀行業務のシナジーを追求しています。
- https://www.smtg.jp/
りそなホールディングス
- 概要: 個人向けと中小企業向けの金融サービスに特化した金融グループです。
- 特徴: リテール分野での独自のビジネスモデルを展開し、顧客満足度を重視しています。信託機能を活用したコンサルティングに力を入れています。
- https://www.resona-gr.co.jp/
千葉銀行
- 概要: 千葉県を主な営業基盤とする地方銀行です。
- 特徴: 地域経済に密着した金融サービスを提供しています。中小企業向け融資に強みを持っています。
- https://www.chibabank.co.jp/company/
楽天銀行
- 概要: インターネット専業銀行として、幅広い金融サービスを提供しています。
- 特徴: 楽天グループのシナジーを活かし、独自のサービスを展開しています。高い利便性と先進的なデジタル技術が強みです。
- https://www.rakuten-bank.co.jp/corp/
しずおかフィナンシャルグループ
- 概要: 静岡県を主な営業基盤とする地方銀行の金融グループです。
- 特徴: 地域に根差した金融サービスを提供しています。海外展開も視野に入れた積極経営を行っています。
- https://www.shizuoka-fg.co.jp/
住信SBIネット銀行
- 概要: SBIグループと三井住友信託銀行が共同出資して設立したネット銀行です。
- 特徴: SBI証券との連携を重視しており、「SBIハイブリッド預金」など、銀行と証券のサービスを一体的に利用できる点が特徴です。法人向けのサービスも充実しており、中小企業のメインバンクとしてのシェアを伸ばしています。
- https://www.netbk.co.jp/contents/company/
銀行業セクターの5年のチャート推移
日本取引所グループの業種別 銀行業セクターの5年チャートを見てみましょう。

2020年にはコロナショックにより、他のセクターと同様に株価は急落しました。
2020年後半にはコロナの懸念も薄らぎ始め、世界各国が経済緩和姿勢に入って、他のセクターでは大きく株価を上げているところもあったものの、銀行業セクターは、経済対策として各国が実施した大幅な利下げは、銀行の主要な収益源である貸出金利と預金金利の差(利ザヤ)を縮小させるという面もあり株価は横ばいの状態を長く続けました。
2022年のロシアとウクライナの戦争の時は、戦争による資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱は、世界的なインフレを加速させました。これが、その後の金融引き締めと金利上昇期待につながり、他のセクターよりも株価の上下は少なく横ばいを続けました。
2023年から2024年までは、世界的なインフレの高進と、それに伴う金融引き締め政策への転換により、金利上昇は銀行の利ザヤ改善につながるため、収益改善への期待で、株価は大きく上昇しました。
2024年から2025年までは、日銀が利上げを行ったところで、一旦出尽くしで株価は急落したものの、日銀の追加利上げ姿勢を見て株価はまた上昇しようとしています。
まとめ
日本の銀行は金利収入に大きく依存しています。2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策を解除し、金利正常化が始まったことで、銀行の利ザヤ(預金と貸出の金利差)が拡大する期待があります。ただし、利上げペースが予想以上に遅い場合や、逆に急激な利上げで経済が減速する場合は収益に影響が出る可能性があります。
利上げ局面では、低金利環境でしか存続できなかった企業(ゾンビ企業)が倒産するリスクが高まり、銀行の不良債権が増える可能性があります。特に中小企業向け融資の比率が高い地方銀行は影響を受けやすいです。
銀行業の売上高営業利益率を直接示すデータはありませんが、純利益のデータから推測することができます。三菱UFJフィナンシャル・グループの純利益は1兆5717億円で、これは銀行業セクターで最も高い数字です。
一方、他のセクターの売上高営業利益率を見てみると
- 不動産業・物品賃貸業: 9.35%
- 学術研究、専門・技術サービス業: 10.03%
- 情報通信業: 4.75%
- 建築業: 4.02%
これらの数字と比較すると、銀行業の利益率は相対的に低いと推測できます。例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループの純利益1兆5717億円を仮に売上高の4%と仮定すると、売上高は約39兆円となります。この場合、売上高営業利益率は4%程度となり、上記のセクターと比べて低いことがわかります。
さらに、銀行業の中でも上位行を除くと利益率はさらに低下します。例えば、10位のしずおかフィナンシャルグループの純利益は577億5700万円であり、これは上位行と比べてかなり低い数字です。
- 1. 業績と財務健全性の確認
- 銀行の業績が好調で、財務が健全であることを確認することが重要です。計画利益達成の確度を確認し、通期会社計画に対する進捗状況を見極めましょう。
- 2. 配当の安定性と成長性
- 過去の配当履歴を確認し、安定的な配当や増配傾向にある銘柄を選びましょう。直近だけでなく、過去の配当と株価を照らし合わせて判断することが大切です。
- 3. 配当性向の確認
- 銀行業では資本規制の影響で配当性向を自由に高められない点に注意が必要です。適切な配当性向を維持している銘柄を選びましょう。
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